STA★AT PITCH REPORTAGE

スタ★アトピッチルポVOL.4

障害者支援機器の
魅力伝わる

テクノツール 島田真太郎社長

 テクノツール(東京都稲城市)はパソコンなどの身体障害者支援機器の開発を手掛ける。様々な障害に対応したテレビゲームコントローラーが評価され、2019年度の第1回スタ★アトピッチでアトツギベンチャー部門賞を受賞した。島田真太郎社長は「福祉の外にいる人にも支援機器の魅力が伝わる機会になった」と、事業の認知度向上効果を指摘する。

島田真太郎さん
▲島田社長は、出場を機に障害者支援機器の魅力を
知ってもらえたと感じている

身体障害者が楽しめるゲームコントローラー

 ゲームコントローラーは任天堂の主力ゲーム機「ニンテンドースイッチ」を身体障害者が楽しめるようにする。パソコン向けの障害者支援機器を開発してきたテクノツールが監修し、ゲーム周辺機器メーカーのホリ(横浜市)が製品にした。支援機器には汎用品で指や手、腕の動きが不自由な障害者がパソコンのキーボードなどの操作を微細な動きで可能にするものが多種類ある。
 コントローラーに支援機器とスイッチをつなげると、障害者でも連打や複数のボタンの同時押しなど、スイッチに必要な複雑な操作ができる。パソコン、スマートフォン用の50~60種類の汎用支援機器をそのまま使える。

身体障害者が楽しめるゲームコントローラー
▲コントローラーを使えば、体が不自由な障害者でも
ニンテンドースイッチを楽しめる

 汎用品と別に、手以外の部位でも動かしやすいジョイスティック、目の動きをセンサーが拾い、操作できるようにするプログラムも開発した。島田社長は「ゲームはかつて1人で遊ぶものだったが、今はインターネットでつながった人と遊ぶことも多くなっている。体に障害を持つ方がほかの人とつながれる機会をより増やしたかった」と開発の動機を話す。
 コントローラーは2万4200円で、20年11月にテクノツールのホームページで販売を開始。米国、カナダ、オーストラリア、英国では代理店が取り扱っており、累計約700台を販売した。

愛好家との出会い機に開発始める

  テクノツールは島田社長の実父の努氏が1994年に設立した。米マイクロソフトの基本ソフト、ウィンドウズ95の発売でインターネットが普及期に入る中「体が不自由な人がパソコンを使い、多くの人とつながったり、できる仕事が増えたりすれば、という思いでパソコン入力支援機器を中心に開発を始めた」(島田社長)

 島田社長は大手電子部品メーカーを経て2012年にテクノツールに入社。取締役だった18年に利用者調査で、支援機器を集めて自らゲーム機を操作できる環境を整えていた障害者のゲーム愛好家と知り合った。「公式なコントローラーをつくって、この環境を再現し幅広くゲームを楽しめるようにしたい」とコントローラー開発に着手した。
 21年9月には努氏から社長を引き継いだ。新型コロナウイルス禍を機にテレワークが広がったことを受け「体の不自由な人でもできる仕事がたくさんあることを示せる、障害者の就労支援事業所のようなものをつくりたい」と新たな事業展開にも意欲をみせる。

 20年2月のスタ★アトピッチ第1回大会当時は試作機が完成した段階だったが、製品コンセプトが評価された。出場した結果「福祉機器でも分野外の人から非常に興味を持ってもらえることがわかった」。障害者ができることをもっと知ってもらう必要があることもわかり、就労支援事業所構想につながったという。
 プレゼンテーション用の動画をつくる過程で、事業内容をわかりやすく説明する工夫が必要になり「自社の事業価値を再認識する機会にもなった」とも話している。

スタ★アトピッチ ルポ一覧

スタアトピッチルポvol.1
スタアトピッチルポvol.2
スタアトピッチルポvol.3