STA★AT PITCH REPORTAGE

スタ★アトピッチルポVOL.1

人材獲得に効果

STANDAGE 足立彰紀社長

 STANDAGE(スタンデージ、東京・港)は、アフリカなど発展途上国との貿易を支援するサービスを手掛ける。ブロックチェーン技術で中小企業でも使いやすい決済サービスを提供していることなどが評価され、2019年度の第1回スタ★アトピッチではスタートアップ部門賞を獲得した。足立彰紀社長は、受賞が「新たな人材の採用や、自社のPR力の磨き上げにつながった」と指摘する。

足立彰紀さん
▲足立社長は貿易業務のデジタルトランスフォーメン
ション化が必要と考え起業した

ブロックチェーンで貿易決済しやすく

 20年から始めた貿易支援サービス「デジトラッド」は人材や販路、知識の不足などで海外との取引をなかなか始められない中小企業が主な顧客だ。取引を始めたい企業の製品・サービスの現地での需要を調べ、販売に最適な地域を提案。販売先の開拓、交渉契約、輸送の手配なども一貫して請け負う。最大の特徴は決済サービスだ。

 貿易を行う際は、製品や代金が届かない事態を防ぐため、貿易保険や輸出先、輸入先双方の信用を金融機関が保証する信用状(LC)を使う。アフリカでは代金の決済インフラが整っていない国もある。「貿易代金の決済に必要なLCを取り扱ってくれない銀行もある」(足立社長)ため、取引が始められないこともある。

 デジトラッドのサービスの1つ、ブロックチェーンによる決済サービスでは、通貨の代わりに米ドルに連動した暗号資産(仮想通貨)、USDコインを使う。契約した情報をブロックチェーン上に記録した、デジタルの世界での金庫をつくる。このブロックチェーン上で輸出先は金庫に代金を入れたことを確認し製品を出荷。輸入先が製品の納入を確認できた時点で輸出先が仮想通貨を受け取れる仕組みだ。

 代金の支払い、製品の納入どちらかが欠ければ取引が成立しなくなるという、取引トラブルを防ぎやすい仕組みを、インターネットインフラさえ整っていれば利用できる。「2週間ぐらいかかっていた代金受け取りまでの期間が半分以下に短縮できる」(足立社長)こともあり、利用件数は1カ月20~30件まで伸びている。

自社の事業を説明する機会で身につけた力

 足立社長は大手商社出身だ。膨大な書類が必要な貿易業務に「貿易の仕組みは500年ぐらい変わっていない。デジタルトランスフォーメーション(DX)化が必要だ」と、17年に同僚とSTANDAGEを設立した。取引金額が少なく海外との取引に乗り出しにくかった国内中小企業と、将来の成長市場であるアフリカ諸国を結びつけたいという思いもあった。海外ではアフリカ最大の2億1千万人の人口があり、高成長が見込まれるナイジェリアの首都ラゴスに拠点を構える。

▲ナイジェリアで国内ディーラーの展示会出展に協力した

 スタ★アトピッチ応募は日本経済新聞社の記事を見て参加を決めた。出場し、スタートアップ部門賞を受賞した効果の1つは人材採用だ。受賞を機に事業内容が記事にも取り上げられたこともPR材料に採用活動を展開し、決勝大会から約1年後の21年4月、大学新卒4人を入社させることができた。

 ブロック大会に出場が決まり、自社の事業を説明する約4分の動画をつくる必要に迫られた結果「PR力が洗練された」(足立社長)という効果もあった。動画のため貿易の課題や複雑なブロックチェーンを使った決済の仕組みを短時間でわかりやすく説明できるよう、プレゼンテーションの練習を重ねたという。

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